皆、元に戻ってよかっただず~♪

其の四十四
変化したお鈴の尻の下でビリーがヘロヘロになって
“どいてぇ~”
と、力なく呻いているが、仕返しとばかりにお鈴はどかない
それを見ながら金爺が細かく笑っていた
ビリーの怒りの感情はかき消されもはや妖力もさほど強くなくなっている
妖怪達はビリーに対する怒りより、ビリーが元の妖怪に戻った事を
嬉しく思っているようだった…
あんなに困らされたと言うのに
妖怪達とはそういう生き物なのだろうか
その隣では、ビリーの呪いから解放されたキクが
ゆっくりと起き上がって “う──っ” と体を震わせた。
ビリーに取り憑かれてからいつも不安と重さを感じていた体が
少しダルさを感じるものの、何故か不思議な位に軽く感じる
「大丈夫かぁ?キク坊」
親指を立ててジャスチャーをしながら栗吉が
にこにこした表情でキクに近づき、ポンと膝の上に毛玉まみれの
柔らかい手を置いて話しかける
「あああ~ヒデー目にあったぜ」
体をビリーに奪われていた時に栗吉に叩かれた尻が
ヒリヒリと痛み、キクは思わず尻を抑えながら呟いた
「男前になったぞ、キク坊」
“おかかかっ” と、変な笑い方をしながら
尻の件を謝るでもなく栗吉は冷やかしながらキクを見て笑った
キクは怒らない
ただ少し何かを考える様に沈黙をした
「ありがとな………栗」
“ボソリ” 聞こえない位小さい声でそう呟くと
恥ずかしそうに眼を下に落とす
『おっ!?』
その小さい声も地獄耳で……まぁ耳が何処にあるのか分らないが
聞こえたらしく、栗吉は
「聞こえなぁ~い、なぁに~?キク坊~♥」
わざとらしく聞き返すと
キクは恥ずかしそうにそっぽを向いて
“なんでもねぇよ” と呟いた
其の四十五
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キクの尻も傷んでいるし皆疲れているので
光藤の傍にある天然露天風呂に浸かろうと栗吉が言い出した
花弁が温泉に落ちてその芳香が湯に付いてそれは良い匂い
しかも湯事態に傷を治す効力があるので皆は大喜びで
湯に浸かる事にしたのだった。
男ばかり(栗吉は一応変化時女子になるのだが…)なので
恥ずかしいとお鈴の姿は無かったが
栗吉、金爺、キクそしてビリーは皆で湯に浸かっていた
栗吉が愛用のタオルを持ってビリーの傍に
思いっきり飛び込むと
ビリーの顔面に湯飛沫が激しく飛びずぶ濡れだ
キクは静かに使っているが尻の痛みが中々引けないらしく
「あああ、ケツ痛ぇ~…マジ叩きやがったな~お前」
と、愚痴を溢すと
栗吉はビリーの葉っぱ部分ををポンと叩き
「ホレ葉っぱ!!お詫びのチッス♥」
等と責任をビリーになすり付けた
ビリーもちょっと悪いと思っていたのか
唇を尖らせて
「ごめんねぇ~♥」
とか言いながら本当にお詫びの(・´з`・)チュッチュ をしようとしていた
『いるか!!!』
ペッ!と、吐き出してキクは丁重にお断りをしたのだった
「所で…ヌち(主)はもう人の里へ帰るんかいな?」
はああ、と気持ちいい息を吐きながらゆったりと浸かる金爺が
不意にそう切り出した
確かに伝説の宝も見つけた、呪いも解けた
キクには此処にいる意味はもはやないだろうが
一つ問題があった…
「どうやって帰んだよ~飛行機ねぇのにさ~」
キクは露天風呂の岩に体をもたれて掛けて
ズルズルと少しお湯に沈んでいった
やっとローンを払え終えたばかりの愛機の事を思えば切なくて仕方ない
朱美に飲まれてしまったか…
そうでなくても壊れてボロボロのヤグサレ号は修理しなければ飛ばないだろう…
修理にも時間が掛かるだろうしまず部品が無い
ずっと妖怪の里にいなければならないのだろうか…
実は帰る手が無いわけではない
お鈴に近くの人間の里まで運んで貰う手もあり
人の里に行く手段は実の所幾らでもあるのだったが
ここにいる妖怪達はその事をキクに教える者はいなかったのである。
人間と一緒にいる時間の懐かしさに
もう少しキクを引き留めたいと言う気持ちが強かったのかもしれない
…次回へ続く!
人間と一緒にいるのも悪くないんだず~