万の妖怪記

妖怪達の住む異世界に迷い込んでみました。

万の妖怪記

“初代” 万・妖怪記 第4話

初代妖怪漫画8

非常食って大事だよな

其の八

自分より大きくて重い人間の青年キクを籠に背負って

栗吉は自分の家に戻った。

 

昔ながらの藁拭きの屋根だ

ぐったりしているキクを布団に寝かせてから兎に角腹が減ってきたので

夕飯の支度を始めた。

 

茄子の糠漬けを出したり味噌汁を囲炉裏の鍋で煮込んだり…

米も竈で炊いて食べる。

栗吉たち妖怪は皆、昔ながらの懐かしい生活をしているのだ

 

夕暮れ時、栗吉の家にある紅葉の木から葉が一枚はらりと落ちる頃

気を失っていたキクの意識が戻り、ダルそうに瞼を開ける

 

“あれ…?”

 

何やら鼻を擽るような良い匂いがする。

腹も減っているせいか凄く良い匂いにとてもいい気分になった

心地良さについ、二度寝しそうになる

だが── 確か自分は “ヤグサレ号” に乗って飛行していたような…

え?!じゃあ此処は一体どこなんだ……え、え!?

 

『はっ!?ここは!!』

 

キクは思わず飛び起きた!

そう、自分はヤグサレ号に乗って宝の島を発見したと言うのに

変な生物の妨害に遭って墜落し、何かに衝突したハズだ!

 

なのにいつの間にか助かって、今はせんべいの様な布団の上で

二度寝しようとしていた。

いや、二度寝はヤバいよな、てか、今自分はどんな状況なんだろう

 

何がなんだ解らないキクは、自分の今までを一生懸命整理しようと考えを巡らせていた

───と…

 

「ホレ、水だ」

「え?」

 

キクの鼻先に茶碗に入った水が急に差しだされる…!

其の九

初代妖怪漫画9

茶碗を差し出した手は丸くて茶っこいまるで毛玉の様だ

おおよそ人間とは思えないその毛玉の先に目線を移すとそこに見たのは

大きな包丁を手に水を持った変な茶色の生き物………ええ!!?

 

「「ああ───っ!!食われるぅ────」」

 

キクは恐怖で思いっきり腹の底から悲鳴を上げた!

まあ、それまでも腹の底から叫んだのは何度もあったが今回が一番

引いてるだろう。

 

「うっせぇな~食ったりしねぇよ」

 

見れば、茶色の毛玉はちゃんと目と丸く尖った様な口が小さく付いていて

眉間らしき場所にちょっとだけシワを寄せながら不快そうに喋るのだ!?

 

「な!?喋った!!?」

 

そのずんぐりむっくりした奇妙な姿の毛玉の生き物は

小さくて短い足で結構素早く自分の方に迫ってくる

キクは思わず後ろにずって仰け反ると、直ぐに壁に突き当たりぶつかった

しかも、何故か言葉が解る、逆にそれが怖い!

 

「非常食にすっから♡」

 

ははは、と笑いながら茶色い生き物は楽し気にキクに話しかけてくる

何やら自分に害を与える気はないらしい。

そんな様に思えてキクは不思議と少し落ち着いた

 

いや、でも…

 

(非常食!?いずれ食う気か)

 

キクは一抹の不安を感じたが、今は逃げる気力も体力も無い

取り合えずこの奇妙な毛玉の妖怪に身を任せる事にした。

 

安心したのか、諦めたのか…キクの腹は “ぐう” と空腹の音を鳴らした。

腹がへったな…次回へ続く。

怖すぎてただ震えるっての…!