亀の妖怪っていいね、凶暴だけども…
其の六
暴れツチガメの朱美が栗吉と豆狸に狙いを定めで喰おうとした
その時───
栗吉と豆狸の頭上を轟音を上げながら何かが掠め通ってゆく
『ガン!!!』
首を伸ばしかけた暴れツチガメの朱美の頭目掛けて
硬い鳥のような物体がぶつかってきたのだ!
「あっ!?」
「お?」
栗吉と豆狸は一緒にびっくりした様な声を出して思わず後ろに振り向いた
それは、先程変な妖怪にからまれて操縦を失ったキクの飛行機 “ヤグサレ号” だった
鋼鉄のヤグサレ号も、流石に朱美の硬い頭に当たってただでは済まず
機体左側の翼とフロントガラスが割れ朱美が崩れ落ちると共に
朱美の頭上に乗り上げてに黒煙を上げていた。
一方、硬い機体が頭にヒットした朱美も白目を剥いて気を失っているようだ…
その様子を伺いながら、栗吉と豆狸は警戒しているのか近づこうとはせず
距離を保ったまま会話を始める
「何だありゃ?」
「鳥…かなぁ?一撃だぁ~」
栗吉も豆狸も初めて見る謎の物体に興味深々だ
妖怪でも無さそうだし一体なんだろう。同時に考えながら弱っているらしい
“硬い鳥” に少し近づく
「ごと!」
「ひゃあああああ!!」
割れた部分から別の何かが落ちて来て豆狸は悲鳴を上げながら傍にいる栗吉に
素早く抱き付いたのだった。
其の七
そおおぉ~…!
硬い鳥の中身から落ちて来た謎の物体に静かに近寄る。
栗吉と豆狸は怖いよりも好奇心の方が勝ってかなり大胆にそれを真上から除き込むと
栗吉はどっから持ってきたのか小枝で突き始めた…
小枝の触れた部分がぷにっと凹む
硬い鉄の鳥とは違って柔らかい生き物らしい
この生き物を随分昔に見たことがあった……確か
──人間だ!!
「おっ!!コイツ人間じゃん」
「え~★珍しい~♪」
栗吉と豆狸はその珍しさに少し興奮気味の様子だ
本当に人間を見るなんていつ振りだろうか…?
事によるともう何百年振りなのでは?!
それ位見ていない。
久方振りに見た人間は青年の様だ、細いながらも筋肉質の体付きをしている
さて、この人間の青年をどうしたもんか
考える間もなく栗吉が青年、キクの頭を持ってグイと起こす
「とにかくこのまんま置いとくワケにゃいかねぇやな、連れてくぞ!!」
それを聞いて嬉しそうに豆狸が答える
「うん♡連れてこ~」
良く見れば豆狸は、キクのしていたゴーグルをちゃっかり失敬している
どうやら気に入ったらしい
暴れツチガメの朱美はまだ失神したまま起きないが
起きればキクの命はないだろう。
助かったとしても他にも危険な妖怪や生き物がいるワケだ
人間を食う妖怪は幾らでもいるのだから…
「食料(メシ)として…」
キクを籠に入れて運んでいた栗吉がポソりと言った
それを後ろから聞いていた豆狸が慌てる
「「えええっ!!!モグさん駄目えぇ───!!!」」
キクの運命や如何に。次回へ続く!
カニバリズムかよ!喰っちゃいかんよ
