露天風呂入りてえ~★
\自分のドメインを選ぼう/

其の四十六
「んじゃ、好きなだけここに居ろや、泊めてやるぞ…俺ん家!!」
のぼせそうになって先に上がった栗吉が持っていた布で
“ペシペシ” とオッサンみたいに股をはたいて湯を拭いながら徐に言った
仮にも一応女子なのだが…
あの変化はこの姿からは想像できない
「おっさん臭ぇ事すんじゃねーよ」
キクが覚めた目で呆れながら言う
だが、ふと何かを思ったかの様に栗吉に尋ねた
「でもよ…いいのか?妖怪の里に人間がいて」
そう、キクは人間でこの島にいるのは妖怪達なのだ
偶然とは言えこの妖怪の里に迷い込んでしまった自分を
妖怪達は今は受け入れてくれいてるがそれは栗吉達一部の妖怪の事
人間を受け入れない妖怪も当然いるだろう
実際にそういう妖怪に取り憑かれ半分妖怪と言う体験をしてきたキクは
不安になってそう聞いたのだった
「下らねぇ事気にすんな」
栗吉が三本しかない髪の水滴を布で拭きながら答える
まるでキクの不安な心を読み取ったような
「大昔は人間も妖怪も一緒に暮らしてたんだ」
続けて何気なく言う
“へ!?” 思わずキクは驚いたような声を出してしまった。
「非常食にもなるし」
ポロっと言う栗吉に “おい!!!” と突っ込みをいれながら
未だにキクにチュー(*´з`)をしようとするビリーの顔を抑えながら
キクは温かい露天風呂の湯を不思議と尚更温かく感じているのだった
其の四十七
\安くて色々選べて/

こうしてしばらくの間妖怪の里に居る事になったキクは
栗吉の家に居候することになったのである。
帰りもお鈴に乗せてもらい
露天風呂から帰って来ると既に日が暮れて夜になってしまったが
今宵は満月で灯りがなくとも明るい
縁側に座って少し休憩していると
涼やかな虫の声が何処からか聞こえてきてとても風情がある
栗吉が大きなスイカを切って持ってきてくれた
自分の畑で採ったらしい
こんな小さな体と不具合な手足だが驚く程栗吉は何でも出来てしまう
それがとても不思議だとキクは思っていた
妖怪とは…一体どんな生き物なんだろうか…
此処にいるのなら少しは知ることもできるだろう。
「ん~懐かしいなぁ~」
おもむろに栗吉が言う
「あン?」
考え事をしながらとスイカを食べながらだったせいか
気の無い返事を返す
「よくこうやって婆や爺達とスイカとか食ったっけ」
婆や爺とは人間の事だろうか
てか婆さんとか爺さんかよ!
キクは栗吉が年寄り臭いのは年齢もだが人間の知り合いが
老人ばかりだったからだと少なからず思った
「なぁ…変化の術は人と暮らしている時に使ってたのか?」
きっと人間の姿になって暮らして居たのだろう…
キクは勝手にそう考えていた
栗吉は少し黙ってスイカをかじると
“ぷっ” と、種を吐き出して静かに答えた
「いいや…使う必要なんてなかったのさ」
ありのままで、人間も妖怪も共に暮らしていた
栗吉はそう言いたかったのかもしれない…次回、最終回へ続く★★
人間も妖怪も一緒に暮らしていけたらな~